第93章 気持ち悪いからやめろ

スプレーそのものの薬効は、そこまで強烈じゃない。だが、同封されていたのはスプレーだけではなかった。香水が1本――。

10ml。車に乗り込む直前、西川安菜はそれを自分の身体に、半分以上も吹きかけていた。

香水の匂いは警戒心をゆるめ、スプレーには睡眠薬が混ぜられている。二つの香りがぶつかった瞬間、人はあっけなく意識を手放す。

阿部蓮太郎の視界がすとんと落ちた。次の瞬間、全身から力が抜け、座席に崩れ落ちる。

西川安菜は、こんなことをするのは初めてだった。けれど頭の中では、何度も何度も同じ場面をシミュレーションしてきた。

深く息を吸い、胸の奥の動揺を押し殺す。わざと窓を少し下げ、外へ向かっ...

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